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本態性血小板血症

本態性血小板血症は、骨髄増殖性疾患の一つで、後天的に(遺伝や生まれ持ってではない)造血幹細胞の遺伝子異常が発生することにより、主に血小板という血液が固まるのを助ける働きをする細胞が増加します。10万人中約2.5人に発症する比較的まれなご病気で、通常は5070歳の方や若い女性の方に見られると言われています。



症状としては無症状のことが多いですが、肢端紅痛症(手足の発赤や熱感、異常感覚)、頭痛、脱力感、めまい、視覚障害などを伴うこともあります。また、本疾患の患者さんは脳卒中や下肢静脈血栓症、肺塞栓症などの血栓症のリスクが高まります。特に、60歳以上の方や血栓症の既往のある方、心血管系疾患のリスク因子(高血圧、糖尿病など)のある方は、血栓症の予防のために積極的に治療を行うことが推奨されています。さらに、血小板数が100/μlを超えるような極度の血小板増加を認めた場合には、血液中のフォン・ヴィレブランド因子という止血に重要な働きをするタンパク質が減少してしまい、むしろ出血しやすくなることがあります(後天性フォン・ヴィレブランド症候群)。長期的な経過で骨髄が固くなって血球がうまく作れなくなる骨髄線維化という症状を引き起こすことがあり(15年間で15%程度)、この状態になると貧血や脾腫(食欲低下、胃もたれ)を認めることがあります。血栓症や出血の発生さえ抑えることができれば、健康な方と同じような生活、予後を期待できるご病気です。



本態性血小板血症の患者さんの約50%JAK2遺伝子の異常が認められ、2030%CALR遺伝子の異常、38%MPL遺伝子の異常が認められます。これらの異常によって血小板産生のブレーキが効かなくなり、過剰に血小板が造られてしまいます。血液検査で血小板の増加が認められた場合、血小板の増加を来すような他の血液疾患(重度の鉄欠乏性貧血、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群など)を除外し、さらにこれらの遺伝子異常が証明されれば診断はほぼ確定します。なお、病初期には他の血液疾患との鑑別が難しいこともあります。



治療としては、血小板の産生を抑えるハイドレア®やアグリリン®という飲み薬が用いられます。妊娠中の女性の方に対しては、一時的にインターフェロンα-2bというお薬が使用されることもあります。また、頭痛や手足の痛み・発赤といった症状の緩和や血栓症のリスク低下を目的に、アスピリンという血液をサラサラにする飲み薬が用いられることもあります。ただし、血小板数が極めて多い方の場合は逆に出血傾向を助長することがありますので、注意が必要です。当院では血小板数や遺伝子異常の有無に応じた専門的なこれらの内服加療も対応することが可能ですので、お気軽にご相談ください。

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