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慢性骨髄性白血病

慢性骨髄性白血病は、後天的に(遺伝や生まれ持ってではない)染色体の配列が入れ替わることにより、フィラデルフィア染色体といわれるBCR-ABL1融合遺伝子というがん遺伝子ができて、白血球系の細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球など)を主とした著しい増加を認める血液のご病気です。発症初期から56年間は慢性期と呼ばれる進行が緩徐な期間を認めることが多いですが、無治療の場合、やがては移行期、急性転化期と呼ばれる段階に進行し、急性白血病と同じように命にかかわる状態になります。しかし、現在はチロシンキナーゼ阻害薬という非常によく効く薬が開発されており、9割以上の患者さんがこの飲み薬を内服するだけで病気を抑えることができています。10万人中12人に発症すると言われており、やや男性に多く、5070歳での発症が多いとされています。



症状としては、初期は無症状のことが多いですが、食欲不振、だるさ、体重減少、寝汗と行った非特異的な症状のほか、脾臓という左上腹部にある臓器が腫れてきて腹部膨満感などを認めることもあります。まれに発熱、リンパ節腫脹、皮疹などを認めることもあります。健康診断やほかの病気での血液検査で白血球の増加を指摘されて見つかることが多いご病気です。



血液検査で白血球、特に好中球・好酸球・好塩基球の著明な増加(通常数万~数十万/μl)を認めた場合にこのご病気が疑われますが、急性白血病などと比べると貧血や血小板減少は軽度もしくは認めないことが多いとされています。診断は、血液もしくは骨髄の検体から慢性骨髄性白血病の原因となる異常な遺伝子(9番染色体と22番染色体が後天的に入れ替わることにより生じるBCR-ABL融合遺伝子)を検出することによって確定します。通常末梢血でFISH法による染色体検査でみつけることができます。RT-PCR検査を用いるIS %BCR-ABL1融合遺伝子定量)ではmajor領域に切断点がない場合は見落とす場合がありますので最初の鑑別ではおすすめできません。また、診断確定や病状把握のため骨髄検査もあわせて行います。



治療に関しては、グリベック®、タシグナ®、スプリセル®、ボシュリフ®、アイクルシグ®といったチロシンキナーゼ阻害剤というお薬を内服することによって、慢性期であれば90%以上の方が体の中にほとんど白血病細胞のいない状態を維持することができます。どの薬も非常に効果は高いですが、副作用の出方などに違いがあり、患者さんの合併症や治療の効き具合に応じてそれぞれに合ったお薬を選択していきます。長期間白血病細胞のいない状態を維持している患者さんにおいては、治療を一旦やめて様子を見るという臨床研究も行われていますが、原則としてこのお薬はずっとのみ続けてもらうことになります。既存のチロシンキナーゼ阻害剤が効かない場合や副作用の問題でつかえない場合にも効果が期待できるお薬が20225月に新たに発売されました。ABLミリストイルポケット結合型阻害薬のセムブリックス®というお薬です。当院でも使用可能です。



一方で、移行期や急性転化期まで進行してしまった場合には、上記のお薬に加えて急性白血病の抗癌剤治療や同種幹細胞移植などの強い治療が必要になります。なるべく早期に診断して治療を開始することが良好な予後にもつながりますので、健康診断等で白血球の増加などを指摘された場合には、当院までお気軽にご相談下さい。

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