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鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血は体内の鉄が不足することで、赤血球という酸素を運搬する血球の中に含まれる「ヘモグロビン」という成分が作れなくなることによって生じる、貧血の中で最も頻度が高い疾患です。妊娠・出産を経験する年代の女性では、ほぼ3人に1人が貯蔵鉄(体内に蓄えられている鉄:フェリチンという血液検査の項目で測定します)が欠乏しており、4人に1人が鉄欠乏による貧血をきたしているとの報告もあります。

私たちの体の中では、胃腸や皮膚や汗に含まれる鉄分が1日に1-2mg程度失われていますが、食事からほぼ同じ量の鉄分が十二指腸で吸収されているため、通常は鉄が欠乏することはありません。しかし、①成長期や妊娠に伴う鉄の必要量の増加、②鉄の摂取不足や吸収不良による鉄の吸収の低下、③月経・婦人科疾患・消化管出血などによる鉄の喪失、などがあると鉄が次第に欠乏していきます。

貯蔵鉄が少なくなってもすぐに貧血になるわけではなく、また貧血も軽度であればほとんど無症状のこともありますが、貧血が進行すると動悸・息切れ、疲労感・倦怠感、めまい・立ちくらみなどの症状の他、顔色不良(赤みがなくなり黒っぽくなる)、匙状爪(爪が反り返りスプーンのようになる)、味覚障害や舌のヒリヒリする感じなどが出現するようになります。

診断のためには、血液検査を行い、ヘモグロビンの低下やフェリチン(貯蔵鉄)の低下、TIBC(鉄を運ぶ血液中のタンパク質:鉄が少なくなると増える)の上昇などを確認することが必要です。簡易的には、MCVという赤血球の大きさが小さくなっていることである程度の目星がつきます。大切なのは、鉄が欠乏している原因をはっきりさせることで、女性であれば婦人科の診察を受けて頂き、月経血がふえる子宮筋腫や子宮内膜症の有無を確認したり、男女問わず胃腸からの出血がないか便潜血検査(便に血が混じっていないか調べる検査:通常は2日に分けて実施)を行ったりする必要があります。便潜血検査が陽性になった場合には、消化器科の先生に紹介させていただき胃カメラや大腸カメラを受けて頂くことになります。

 治療に関しては、鉄剤の内服を行いつつ、出血の元になるようなご病気がある場合にはその治療を並行して行います。のみ薬では鉄が吸収できないようなご病気の方には鉄剤の点滴という選択肢もあります。症状が出ているような貧血の方は、食事からの鉄分の摂取(レバー、ホウレンソウ、牛乳など)ではなかなか改善しないことが多いですが、鉄剤をしっかり内服できれば23週間で症状は改善してくると言われています。ただし、貯蔵鉄が十分に貯まるまでは鉄剤の内服をやめるとまたすぐに症状が再発してしまうので、少なくとも「6ヶ月以上は鉄剤の内服を継続する」ことが望ましいとされています。月経が原因となる際は閉経まで少量でいいので続けることをおすすめしています。鉄剤の副作用としては嘔気・嘔吐、便秘・下痢などの症状が出る方がいらっしゃいます。比較的消化器症状がでにくい鉄剤があります。のみ薬が難しい場合は点滴でも対応可能です。以前に比べ頻回に通わなくても十分な鉄を補充できる点滴も発売されました。お気軽にご相談下さい。

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